「ホームページを作ってください」と言われて、作らなかった。——集客はそのままに広告費2,000万円を削る、逆光のブランディング論・佐々木勇さん
広島生まれ、広島育ち。デザイナーとしてキャリアをスタートし、印刷会社、ウェブ制作会社、内装制作会社、福祉事業のベンチャーを経て独立。2024年1月、広島市中区に株式会社逆光を設立した佐々木勇さんに、ブランディングという仕事の本質、そして地方でチャレンジすることの意味を伺いました。
ある業界の「常識」は、別の業界ではもう解決されている
――まずはこれまでのご経歴を教えてください。
広島生まれ、広島育ちで、もともとはデザイナーとしてキャリアをスタートしました。印刷会社、ウェブ制作会社、内装制作会社、そして福祉事業のベンチャー企業を経て、独立という形になります。
ウェブ制作会社にいた頃は、ディレクションやデザインを担当しながら、電話でお客様に内容を伺ってホームページを作っていました。ありとあらゆる業種の社長さんや個人事業主の方とお話しする機会が多かったんですね。その中で気づいたのが、「業界の常識」って結構あるんだなということ。ある業界では当たり前になっている課題が、別の業界ではとっくに解決されている。ずっとその業界にいる人には気づけない「枠組み」が確かに存在するんです。その気づきから、デザインという領域を越えて、より上流のマーケティングやブランディングへと軸足を移していきました。
たまたま最後に入った会社が福祉事業のベンチャーで、そこでは事業所の立ち上げから全部やらせてもらいました。逆光は2024年に立ち上げた3期目の会社ですが、個人事業主の時代が3年ほどあったので、独立してからは6年くらいのイメージです。

リブランディングとは、「変えてはいけないもの」を見つけること
――現在はどういったお客様が多いのでしょうか。また、ご提案の際に工夫されていることはありますか。
「”文化”を綴る」ということをミッションに掲げていることもあって、広島でも歴史の長い会社――80年、100年と続いているような企業の新規事業の立ち上げやブランディング、そこから事業戦略やマーケティングまで、一緒に取り組ませてもらうことが多いですね。
工夫として大事にしているのは、まずはとにかく話を聞くこと。そして、その「聞き方」です。「何を変えようか」という視点で聞くのではなく、「今まで積み上げてこられたものは何なのか」を、敬意を持って聞いていく。リブランディングというと「変えていく」イメージがあると思うんですが、その会社の普遍的なもの、変えてはいけないものを、まず絶対的に出していく。そこを土台にして、伸ばしていきたい部分にタッチしていくんです。

この姿勢は、同社が行動指針の筆頭に掲げる「リスペクトファースト――過去に敬意を払う」という言葉にも表れている。ビジョンは「らしさ」を紐解くこと。新規振袖ブランド「FURICO」の立ち上げや、社名変更を伴うCSK株式会社(旧・中国紙工業株式会社)のリブランディング、AI特化型就労移行支援「karkel」のブランド設計など、その実践は着実に形になっている。
「ホームページを作ればブランディングできます」は、時に偽物
――印象に残っているエピソードはありますか。
よくあるのは、ブランディングやリブランディングというと、「ホームページを作れば解決する」みたいなイメージだったり、プロモーション領域の話をしている人が大半だということです。実際、「ホームページ制作をすればブランディングできます」と言っている会社さんは多い。でも、そういうものは時に偽物ですよ、と。基本的には、まず企業としての「在り方」があって、それをやり方に落とし込んだときにツールがあって、それが人に伝わったときに初めてマーケティングやブランディングになる。まずはこの認識のズレを解消するところから始めます。
短期的な話がプロモーション、中期的な話がマーケティング、長期的な話がブランディング。これを説明した上で、基本は一気通貫で、今どのフェーズにいるのか、今のままでいいのか、変えなきゃいけないやり方があるのかを見ていきます。

実際にあった話ですが、とある会社から「ホームページを作ってください」と依頼をいただいて、作りませんでした。代わりに何をしたかというと、その会社の発信、打ち出しを全部見直したんです。オールドメディアからウェブまで、あらゆる媒体に展開していたので、「これはどのくらい効果が出ていますか」と聞くと、数字は代理店が握っていて、「わかりません」と。「じゃあ代理店から数字的なものはどう共有されていますか」と聞いても、わからない。事実ベースで数字をもらってみたら、実質、効果がなかったんですよ。かなり無駄な広告をかけてしまっていた。
そこで整理をした結果、集客数は全く変わらないまま、2,000万円の広告費削減になりました。今までいかに無駄なことをしていたか。その予算がまるまる利益になるので、「この利益を持って、どういう戦略を組み立て直しましょうか」というところからアウトプットし直したことがあります。
もちろん、マスメディアが全くいらないという話ではありません。認知の部分では生きてくるものもあるので、そこは取捨選択しながら戻すものは戻す。そうやって見直したおかげで、新しいプランの立ち上げにもつながっていきました。
関わり方としては、永遠に伴走し続けるというより、社内の担当者の方に知見を落として、1年、3年というスパンで伴走した後に、我々が「卒業」するイメージです。「ここまで来たら、もう自分たちでできると思うので」と。

首都圏は貨幣経済、地方は信用経済
――今後の時代の流れを見たとき、どういう立ち位置でやっていくべきだとお考えですか。
広島に「ブランディング会社です」というところはほぼないと思うんですが、3年やってみて、その「ない理由」が見えてきました。首都圏の企業さんと地方・広島の企業さんとでは、課題に対する解像度、立ち位置が違うんです。よく「貨幣経済と信用経済」という言い方をするんですけど、首都圏の1都3県は、何をやっても相場で動いている。「これをやったらこうなる」という解像度が高いので、部分を最適化しても成果が出るんですよ。SEOをやる、リスティングをやる、一部のマーケティング施策だけでも経済的な効果が見える。これくらい投資すればこれくらいの効果が出る、とわかるから、新規の会社もライバルは多いけれど参入しやすい。
一方で地方に行くと、ライバルの数は少なくなりますが、「なんかうまくいかない」「人が減ってきている」の原因が特定しにくい。効果が見えないものにお金は出せない、という感覚がどうしてもあるんですね。
地方の市場では、マーケティングやブランディングに対して、ニーズはあってもウォンツまでいっていない。なんとなく課題やペインは持っているけれど、それを解決する手段として「リブランディングする」「マーケティングを強化する」という解像度がない。共通言語になっていないんです。
だからこそ、まずは単発で効果を見せるしかないと思っています。わかりやすいところで言えば、ランディングページ×広告を一発小さくやってみて、今までと違う反応が取れる。「じゃあもう少しやってみようか」となる。地道ですが、そうやって理解を積み上げていく。そして、極力横文字を使わずに寄り添っていくことも大事にしています。
全体的に「そもそもやらないといけないよね」という空気になって、みんながやるようになれば、うちも稼げるし、みんなも稼げる。広島の経済を発展させる、そういう循環が生まれるといいなと思っています。

顔が見えないから、想像が生まれる――社名「逆光」の由来
――今更なんですが、社名の由来を伺ってもいいですか。かなり特徴的ですよね。
この会社は3人で創業したんですが、その中に映像のクリエイターがいるんです。映画の世界では、物語を想起させるときに必ず「逆光」の表現が使われる。逆光で正面から見ると顔が見えない。顔が見えないからこそ、見ている側がその感情を想像する。あえて見えなくして、輪郭だけを描くことで、想像させる。そこから取っています。
それと、この業界のマーケティング会社は横文字の社名が大半なので、そこもちょっと逆張りで日本語にしました。日本人って、西洋の文化を取り入れて独自に解釈してきたじゃないですか。マーケティングという西洋の文化を東洋的に解釈して形にしていく。そういう意味も込めています。
逆光的視点。ネガティブからアイデアを生み出す光。 逆光的発想。バックライトは輪郭を輝かせ、唯一無二の物語を投影する。 ブランディングは、順光から逆光へ ——
同社のウェブサイトには、社名に込めた思想がこう綴られている。

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」「勝って兜の緒を締めよ」
――佐々木さんのモチベーションはどこにあるのでしょうか。また、将来どんな人になりたいと思われていますか。
身の回りの会社は、すべてがそれぞれのブランドだと思っていて、それが伸びてくれることが本当に嬉しいんです。広島で生まれ育っているので、この地域でまたチャレンジしてくれる人が出てくる、その一部になれたら。そこが一番のポイントですね。いろんなブランドに関わって、その立ち上げと成長を見ていきたいと思っています。
あと人の進化が止まるのは、想像が止まった瞬間なのかなと思っていて。自分自身はその瞬間を見届けることはできないかもしれないけれど、関わった先の方々の中で「佐々木さんにお世話になってね」と語り継がれていく。
生きた証じゃないですけど、文化が続いていく、文化の文脈が流れていくというのは、そういうところなのかなと思っています。だからこそ、不誠実なことはできないなと。
また私が死んだ時にお葬式に1000人は来て欲しいですね!それくらいの影響を与えられるように頑張ります。

――最後に、同じくチャレンジしている挑戦者たちへ、ご自身が大事にしている言葉でも構いませんので、一言メッセージをいただけますか。
自分が大事にしている言葉は2つあります。
1つは「実るほど頭を垂れる稲穂かな」。
もう1つは「勝って兜の緒を締めよ」。
謙虚さを忘れず、うまくいったときこそ締める。浮き足立たないように、地に足をつけてやっていく。それが誠実さなのかなと思っています。
会社概要
| 会社名 | 株式会社逆光 |
| 設立 | 2024年1月 |
| 所在地 | 〒730-0051 広島県広島市中区大手町4丁目3-1第3シンコービル3階 |
| 代表取締役 | 佐々木 勇 |
| 事業内容 | 経営理念設計/プロモーション/ブランディング/新規事業開発 |
| URL | https://backlight.co.jp/ |
Mission 「”文化”を綴る。」 Vision 「らしさ」を紐解く。
人の心を動かす光と共に、物語が進む方へ。
広島発・挑戦応援メディア