「商材は、俺」——ガードレールも、外壁も、木も直す。売上も利益も全部見せる29歳の「決断覚悟」 | 桑田 健聖さん
壊れたガードレール、突っ込まれた家の外壁、折れてしまった木。広島を拠点にそのすべてを引き受けながら、運送業、飲食業まで手がけるのが0.to.1株式会社だ。代表の桑田健聖さんは、取材の5日後に30歳を迎える。「商材は、俺」と笑う若き経営者に、人が集まる会社のつくり方と、「決断覚悟」の中身を聞いた。
ガードレールも、外壁も、木も植える。「どれをお願いされても、いけます」
――まず自己紹介と会社のご説明をお願いします。
0.to.1株式会社の桑田健聖です。
事業内容は大きく分けて3つあって、1つ目が建設業。内容としては、自動車事故の補修工事にあたるものです。メインで言うとガードレール。車が家に突っ込んだら外壁も直すし、外構工事もやるし、最近だと「車がぶつかって木が壊れたので、木を植えに行く」というのもありました。プラタナスとか、いろんな木があって、ジョウロで水をやって育てて、腐らせないようにして植えに行くんです。
――えっ、木を植えたりも。
本当にやるんですよ。あとはガラスとか。明日は僕、ガラスの現場に行きます。依頼が入る理由は、要は「車の事故」。取引先に保険会社があって、そこから依頼を受けて直すんです。空調が壊れたら空調も直すし、幅広いんですよ。僕らは専門職じゃないので、広く浅く。難しいことも多いです。ある程度誰でもできるようなことは自分たちでやって、それ以外は「ガラス屋さんを紹介してほしい」とお願いしたり、協業しながらやっています。

エリアは中国地方がメインで、結構あちこち行っていますね。今週も水・木・金は島根と鳥取にいます。だいたい1日に2現場。「ここが剥げているから直す」「これが曲がっているから、コア抜きといって穴を開けて直す」みたいな仕事です。塗装もあるし、左官もある。だからいろんなことを知れるし、強みで言ったら「どれをお願いされてもいけます」。動きも早いし、対応は最後までちゃんとする。業種ごとの専門性だけで見られたらちょっと弱いかもしれないけど、「全部まとめてお願いされて、金額を抑えます」ということができる。そこは他社とちょっと違うところかなと思います。
それが1つ。あとは運送業で、ヤマトの下請けの軽貨物運送をやっていて、メインは広島の中区を回っています。それから、飲食業の流れで店舗もある、という感じですね。
25歳のとき、「ちょっとやばいな」と思って
――桑田さんご自身のこれまでの経歴も、話せる範囲で教えてください。
呉出身で、高校まで呉にいて、大学から広島修道大学に行きました。そこからは夜の仕事をやっていて、25歳くらいになったときに「ちょっとやばいな。昼の仕事を始めようか」という感じで起業しました。いま4期目で、10月から5期目に入るところです。
経営一家でもなければ、経験もゼロ。「みんなでゼロから1をつくる」
――すぐに「起業しよう」となったのは、何かやりたいことがあったんですか?それとも流れで?
経験は、ないんです。僕は両親とも中国電力に勤める普通のサラリーマン家庭で、経営一家でもない。僕が創業者です。ただ、普通に会社で働きたくなかったんですよ。時間もお金も縛られるし。そういうところから、自分のやりたいことを、と。
ただ「やりたいこと」でぶっちゃけて言うと、今の仕事が”やりたいことだったか”というと、そうでもないと思うんです。会社の名前が「0.to.1」で、「みんなでゼロから1をつくる」という意味なので、「みんながしたいことをしよう」という会社なんですよ。
だから強みでも弱みでもあるんですけど、いろんな業種があるから「すごいね」と言われる一方で、「じゃあメインは何なの?」と聞かれると、そこは課題ではあって。ゆっくりホールディングスにしたいんです。実際、0.to.1が株を100%持つIGO(IGO-SECURITY株式会社)があって、取締役でもある仁井田くんが、もともとうちの一事業だった警備業を独立させました。ああやって一つずつ、業態ごとに独立させてホールディングスにしていくのを目指している、という感じですね。
プライベートでは、したいことはたくさんあるんですよ。でも今の業態的には、本当に「みんながいて、自分がいる」。みんながいなかったら、もう会社は成り立たないので。

「商材は、俺」――現場ごとの売上も利益も、全部見せる
――なぜ、0.to.1には人が集まるんだと思いますか?
どうなんだろう(笑)。若い子が多いんですよ、やっぱり。そこは勢いだし、他の会社と違うところって何なんだろうと考えると
……俺? 商材が、俺?(笑)
まあでも、人間力みたいなところだと思います。言葉遣いとかも結構大事にしているし。正直に言うと、給料で入ってくる人は違うんですよ。「こっちの方が給料いいよ」と言われたら、そっちに逃げちゃう。うちは給料が悪くて辞める子はいないし、給与もそこそこいいかなと思います。僕は出せる分だけ出すので。
あとは、会社のお金を全部、下の子たちに見せています。一つの現場ごとに、どれだけ売上があって、どれだけ利益が出ているか、全部出しているんです。超透明。正直、それが見えた方がやる気が出るし、頑張れるじゃないですか。数字が良くなくなったときに見せなくなる会社も多いですけど、うちはよく見せた方がいいと思っていて。「それで頑張ろう」という空気になるので。
一人ひとりに関わる時間も多いかもしれないですね。「社長っぽくない」と言われるので。一番近くにいたいんです。みんなが好きだからできている立ち位置だと思います。経営という部分は、人対人で言ったら、結構得意分野というか、好きなことなのかなという感じです。

「恋愛と一緒」――やりたいことは、探しているときには見つからない
――今の同世代や少し下の世代には、やりたいことがない、憧れや意欲を抱けないという方も一定数いて、増えてきている気がします。僕らも挑戦応援メディアとして「挑戦が循環すればいいな」と思っているんですが、どうアプローチすべきだと思いますか?
好きなことと得意なことって、違うんですよね。僕もしたいことはまだまだあります。芸能関係にも興味があったし、メディアとかエンタメ系もやってみたいことがいっぱいある。でも「今ではない」し、今後のタイミング次第。結局、一番は”人”だと思うんです。まず、自分がしたいことを見つけた方がいい。
それって、何かのきっかけとかタイミングじゃないですか。恋愛と一緒で、「彼女欲しいな」と思っているときには意外とできなくて、ふとしたときに「この子いいな」と思う。僕自身、この業態も”したくて”やったわけじゃないけど、いろんな社長さんや従業員と話しているうちに「あ、それいいじゃん」となって、「じゃあスタートしよう」となった。
だからうちでは、「お金は会社が出すから、それを大きくしていって、子会社でいいから社長になってね」と言っています。全員が社長を目指している感じです。もちろん目指していない子もいますよ。でも、仕事に対して「これがしたい」がなくても、「こうなりたい」「未来こうなりたい」「これが欲しい」「ここに旅行に行きたい」は、多分それぞれあるんですよね。
僕自身は、お金はある分だけ全ツッパするタイプなんです。会社にお金は残していますけど、自分の給料はもう全ツッパ。若いときにやっておかないと。僕、あと5日で30歳になるんですけど、20代は本当に、お金と時間を全部使って、経験に替えた方がいい。30代からは、20代の経験をもとにお金を稼いでいく。40代以降は、お金でお金をつくることをしたい。そういうビジョンは一応あるんです。20代で金を使って、その経験で30代に稼いで、40代は金で金をつくる。60代からはもう回すだけ、みたいなイメージですね。

従業員というより、家族。「この会社でよかった」を一人でも増やしたい
――まさに30歳になられるタイミングで、より具体的な目標だったり、「こういう動き方をしたい」というのはありますか?
数字の目標というより……僕、「従業員」というイメージがないんですよ。大げさに言ったら家族じゃないですけど、うちで働いてくれている子たちの中に、一人でも「この会社でよかった」と思える子が増えてくればいいなと。今はまだ何も分からなくて、「未来、大丈夫かな」と思いながら働いている子ももちろんいると思うんです。みんなすごく頑張ってくれているので、負担もあると思う。今後、仕事にも慣れてきて、そう思える子が増えてくれたらなと。30代の目標とは少しずれるかもしれないですけどね。
それと最終的には、僕は広島で育ったので、広島を盛り上げたい。地域貢献もしていきたいです。同友会に入ったのも、それ込みです。

決めたら、やる。「10年頑張ろう」は無理でも、「1年だけ」なら頑張れる
――挑戦しているチャレンジャーたちへ、普段社員さんに伝えていることでも構いませんので、一言メッセージをいただけますか?
伝えたいというか、普通に「何のために仕事をしているのか」は考えた方がいいなと思っています。僕は初心をすごく大事にするんです。それが意外と大きい。最初、本当に何もなかったので。僕らも最初はいろいろやらかしたりして、僕自身は9ヶ月くらい給料がなかった。それでも、みんなへの給料は絶対に遅らせず払ったし、「やるしかない」しかなかった。だから、やるか、やるか、やるか、でしかないんです。
うちの会社のホームページの下にも書いてあるんですけど、「決断覚悟」。やるって決めたら決めて、他のものは断って、覚悟を決めてやろう、と。個人ミーティングのときは「1年でいいから、1年だけ頑張ろう」という話をしますね。「ずっと頑張ろう」って難しいじゃないですか。「今から10年頑張ろう」と言われたら頑張れない。でも「1年、俺と向き合って、この仕事に向き合って頑張ってみよう。利益が上がったら、これくらい給与を上げるよ」なら、頑張れる。
だからうちは、ボーナスも「会社の利益のこれくらい」というのを言っているんです。0.to.1の3業種、全部です。こっちが搾取していたらダメなので。会社が大きくなれば、みんなの給料も上がるよ、と。他の会社って、会社や社長に対する愚痴が多いって言うじゃないですか。うちは「絶対に言わせない自信がある」と言えるくらい、関わっています。
やっぱり、今頑張らないと未来は変わらない。過去が今をつくって、今が未来をつくる。今、不満を言っていても未来は変わらないから、今やった方がいいんだよ、という感じですね。

昼は現実の話、夜は夢の話。「寝て、また夢を見る」
――普段は、社員さんにあまり多くを言わないんですね。
仕事の話は、あんまりしないですね。気をつけているのは、日中は仕事の話をして、夜はしないこと。だって、寝る前に現実の話をされたら寝られないじゃないですか(笑)。すごくシンプルな話です。だから僕がいつも言っているのは、夜は「こうなりたい、ああなりたい」と夢の話をして、「よし、じゃあ今から寝て、また夢を見よう」。現実で夢を話して、寝て夢を見る、ということです。
それと、男の子ってやっぱり単純なんですよ。うちは本当に男しかいなくて、「女の子がいないからダメなのかな」とすごく考えた時期もあったんですけど、振り切って「男だけでいいでしょ」と。男って、欲の塊じゃないですか。欲がないと頑張れない。「これが欲しいから、買うために頑張ろう」「みんなでここに旅行に行くために頑張ろう」。そういう話を僕は一番よくします。僕自身が「そうじゃないといけん」と思っているので、自分でもやっています、という感じですね。

「やる気のある女性がいたら、お金は投資します」
――最後に、PRしたいことはありますか?
さっきの話と真逆を言うんですけど――女の子、欲しいです(笑)。
うちに女性がいないのは、別に慣れとかではなくて、ただ今は「女性が輝ける業種」がないだけなんです。それは正直、これから作っていこうと思っているので、やる気のある女性がいたら、僕は全然何でもしますよ。お金は投資するので。お金は、あるんで。
あとは、やっぱり同世代を盛り上げたい。
代表取締役 桑田 健聖(くわた けんせい)
広島を拠点に、建設業(自動車事故の補修工事)・軽貨物運送業・飲食業を展開。
広島発・挑戦応援メディア